Little AngelPretty devil 
      〜ルイヒル年の差パラレル

    “ハロウィンはまだ少し先ですが”
 



日本のマスメディアの先行癖は相変わらずすさまじいものがあり。
お盆が終わると同時くらいにハロウィンのイベントを告知するCMが流れ始め、
そのハロウィンがまだ先だというにクリスマスフェアのニュースが取り沙汰され。
そうかと思えば、業界内で…では済まない露出で
おせちの予約だの来年のトレンドはだのという話も出ているから、

 「先取りといやのファッションに敏感な顔ぶれは、
  半袖で出かけるのがさぞかし恥ずかしいんだろうな。」

俺ってばダサい朴念仁でよかったなぁ、なんて、
わざわざ口にするところを見ると。

 “ああ、そっか。”
 “あれの撮影に引っ張り回されてたんだな。”

この時期恒例、
某アイドルさんの新年度カレンダー用スチール撮影がやっとこ終わったので、
暑苦しいのにフリースのアンサンブルとか着せられた腹いせ、
遠回しに憤懣を紡いでおいでなんだなと。
そこまでを察することが出来るなんて
賊徒大学アメフト部員の皆さんも大した洞察力がついたもんであることよ。(笑)

「直接関係があるかないかじゃなく、
 今の今 不機嫌かどうかくらいは拾っておかねぇと。」

俗にいう“八つ当たり”とか“巻き込まれ”とか、
もらい事故みたいなものであれ、
痛い目見るのは勘弁願いたいからなというところかと。

「誰かバイクで事故ったのか?」

いやいや葉柱さん、
そんな真顔で見まわさないでやったげて。
ホントの事故の話じゃなくて…と言いかかったもーりんだったが、

 “いやぁ、いっそ不慮の事故扱いで誰かに補填してほしい。”

本気で思う部員も少なくない様子。(笑)
鬼軍曹の恐ろしさは相変わらずに健在ならしく、
秋の星取戦の真っただ中、
鋭とした緊張感が続いているのは、まま喜ばしいことなんじゃあ。(う〜ん)
何せ気を抜いていられる立場じゃあない。
いつの間に呼び方が変わったやらの、かつての一部リーグ、
TOP8や BIG8に食い込むためには入れ替え戦に残らにゃならず、
となれば余裕で首位の座をキープせにゃならぬ。

「とはいえ、その折に競う相手は一部の最下位チームなわけだから。
 今の今 順調でも、浮かれてちゃあいかんのだ。」

昭和の頑固おやじみたいなことを云いつつ、
尻を叩く手段には、今時のスマホやGPSやを活用するのだから始末に負えぬ。
相変わらず、
けぶるような金髪に愛らしい面差しという風貌とは裏腹な
スパイスの利いた激辛コーチ殿であり。

「瀬那坊と仲がいいのが信じられん。」
「ああ、あの可愛い坊やな。」

時々、試合会場などで声を掛け合っておいでの王城シルバーナイツのマスコットくんのことで、
クラスメート同士だというのはもはや周知の存在なれど。
ふんわり、甘甘な雰囲気の、向こうさんは正真正銘の天使のような愛らしい坊やなので、
なんでこのとんがらし坊やと気が合うのかが不思議だなぁなんて
一年坊主辺りには不思議でならないそうで…




  ◇◇


賊学大で引き合いに出されておいでの小早川さんチのセナくんは、
こちらもこちらで
王城大学シルバーナイツの主要メンバーが高等部に所属していたころからのお付き合い。
なので、外部入学組の賊学の一年坊主たちには、
成程 何でこうまで毛色の違う坊や同士が仲いいのかなぁと不思議に映るのかもしれぬ。
蛭魔さんチの妖一くんが、
子役タレントかモデルみたいな見栄えを大きく裏切って
大人でもやり込めてしまえる毒舌と
破天荒なまでの行動力を備えているのとは対照的、
こちらの坊やは見た目そのままに、
ふんわりとした性格とどこか覚束ない所作や行動というのがまた、
放っておけない可愛らしさとなっておいでの、文字通りの“マスコット”さんで。
しかもしかも、

「何せ、可愛いとか萌えとか、まずは理解できなかろう進先輩が、
 無表情のままながらも傍から手放さないでいるほどなんだしな。」

おいおい、そんな言い方があるかい。(苦笑)
まま、舞台は変わって こちら王城大の皆様の言いたいことも判らんではなくて。
ストイックが過ぎてか、
それともそこまで突き詰めて一つことだけに集中しておればこその最強・最速か。
およそ、趣味とか息抜きとかいったことには縁のない、
ただただアメフトひとすじ、鍛錬一直線を地でいく青少年だった進清十郎くん。
ジョークも通じず、流行も知らず。
しかもそれで不足も不満もなしという一徹さが きっちりと、
鋼のような気力と体とを鍛え上げた結果をもたらしもしておいでと来て。
そんな石部金吉さんが、なのになのに、
マシュマロみたいな笑顔と
いかにもお子様ならではな頼りない言動の、
自分とは対局の存在だろう瀬那くんには普通の対応をしておいで。
可愛い可愛いと視線をすえるし、(目の高さを合わせるというの 一番に覚えたし)
声が聴きたい、連絡し合いたいと、メカ音痴が一転して携帯を使うようになったし。
(ひところほど破壊しなくなった辺り 手加減を覚えたらしい)
そんなまでのいい影響をもたらした天使様なものだから、
チーム内でも特別扱いなのは当然だし、
桜庭くんが迎えに行くのへ“何なら自分が車を出すぞ”と言い出す顔ぶれまで出るそうで。

 “…でもなぁ。
  一概にそうそう
  “天使みたいだ”と持ち上げてばかりもいられないんだよねぇ。”

なんて言いようをするのが、意外にも桜庭さんで。

 “だって、ねぇ…。”

いつまでも暑い日和が続いたものの、
それでもさすがに10月に入れば朝晩の空気も冴えて来て。
街路樹も少しづつ色づき始めており、
小さな実をつけた枝が風に揺れる様が、
茜色の夕陽に照らされたりするとちょっぴり寂しげ。
泥門小学校と王城大学は結構離れているため、
セナくんに自力でおいでと強いるのも気の毒なので。
そこで、セナくんが昼過ぎまで授業を受ける日なぞは
下校時間に間に合うようにとタイミングを計り、
結構な距離なのを苦にもせずロードワークに出る最強ラインバッカ―さんだったりし。
そんな彼らが落ち合っているのは小学校寄りの公園で、
このくらいはウォーミングアップにもならぬらしい進さんが、
ベンチに座っていたセナくんに気付いて、目配せにて こんにちはとご挨拶。
わあと嬉しそうに微笑う小さな坊や相手に、
慣れのない人にはなんて不愛想なのかしらと怪訝に思われよう寡黙さだが、
当のセナくんにはちゃんと伝わっており、

「あのねあのね、進さん。」

他愛ないおしゃべりに、そうかそうかと真面目に相槌を打つという、
彼を知る人からはからで やはり驚かれよう (笑)
そんな逢瀬は何とも微笑ましいのだが、

「セナ、今年のハロインの仮装はコウモリさんに決めたのvv」

そういや、そこはさすがにアメリカのスポーツだからか、
それとも川崎スタジアムでのゲームが多いからか、
10月末のハロウィン前後に催されるゲームでは
仮装をしてくれば入場料が半額になるとか、記念グッズをプレゼントするとか、
特別な趣向をするアメフト協会だったりし。
各チームのチアやマスコットの皆さんも、
ここぞとばかり ちなんだコスプレをして ファンの皆様にアピールするのが通例で。
ここ最近は、賊学と王城の二大マスコットが
インスタや何やへ写真をUPされまくりになるほどに話題を集めており。

「ほら、ヒル魔くんに作ってもらったvv」

カチューシャのような連結部分には
モール仕立ての触覚付きのイヤーマフ。
そこもちょっと妖怪、もとえ、妖精ぽくという趣向か、
毛足の長いボア付きのイヤーマフが小さなお耳を隠しているのが
小さな仔熊か何かのようで愛らしく。
くせっけの上へ装着したのはそれだけで、
ご本人のいでたちは、ごくごく普通の合服姿。
木綿のジャージ地らしきフード付きのジャンパーに、
ボーダー柄のシャツと一丁前にもカーゴパンツ風のズボンという
今時分向けのお子様らしい恰好だのに。
そんなアイテム頭に乗っけ、軽くぐうに握った両方のお手々、
コウモリと言いつつ仔猫の真似か、胸の前でにゃあとポーズを取って見せれば、

「……っ☆」

息が止まったかのように、切れ長の双眸を括目した誰か様。
その拍子にその手にしていたとあるものがぎゅうっと握られて、
中空にとんだ“中身”が陽を浴びてキラキラと光ったのが

「わぁ、噴水みたいだvv」

わぁと振り仰いだそのまま素直に喜んだのがセナくんあらば、
それが降り落ちてきたのへと、間一髪傘を差しかけ二人を庇ったのが桜庭くんで。

「植田in って3mも飛ぶのな。」
「進の握力あってのこったろうがな。」

茂みを挟む格好の裏手のベンチからも“たまたま”見えたらしく、
素直といや素直に感心していたのが
フリル・ド・リザードの主将とコーチ殿だったりし。
いかにも作為のありげな“たまたま”らしいと、
そこは勘もいい桜庭がむむうと口許をとがらせてしまい、

「そこ、こんなカッコでウチのエースを動揺させてもらっちゃ困るんだけど。」
「何だよ、桜庭。」

根拠なく何か疑うのはやめろよなと、
そうと言いつつにやにや笑う小悪魔さんであったりしたのだけれど、

「そうまで怒るなジャリプロ。
 他意はないんだ、本当に。」
「…その呼び方はやめてって。」

恐持てだが根は誠実というか人がいい、
小悪魔さんの一応は保護者、葉柱がとりなすように口を出す。
その傍らでは、

「でもなあ、TOP8だけでも波乱を見せてくれたら、」
 結果 最下位になったチームが途轍もなく疲弊してくれんじゃねぇかとか、
 多少は目論んでもいるけどな。」
「ヨウちゃ〜〜ん

しゃあしゃあと言ってのける金髪の小悪魔さんへ、
桜庭と葉柱が“おいおい”と困ったように眉を下げ、

「???」

当事者の大きいお兄さんと小さな坊や二人、
なんだなんだとキョトンとして見せて。
秋の木の葉の匂いのする公園の空に
ヒタキの高い声が響いていたそうな。


     〜Fine〜  16.10.09


 *随分ぶりです、気がついたら秋のリーグも始まってましたね。
  それでなくとも平安時代のお話の方が増えてるというに、
  この時期のこの人たちを書こうとは、
  我ながらいい根性しております。(おいおい)
  植田in のパウチって何ml 入っているんでしょうね。
  握っただけで空中へ飛び上がるなんて、どんな握力と瞬発力なんだか。(笑)

ご感想はこちらvv めーるふぉーむvv 

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